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社名の由来

 口頭で思い入れを込めた言葉を説明するのはどうにもやりにくいものだが、文字ならかなりできるもの。そこで、社名の由来も明らかにしよう。

 池ヶ谷の偏ったロック歴において、長くはないがそれなりに大きくJethro Tullという名前が輝いている。彼らの作品に「A Passion Play」というアルバムがあるわけだが、このタイトルを意識しての命名だった。このアルバムはLP全体が1曲という扱いながら、間に「眼鏡をなくした野うさぎ」のコントが挿入されている(この途中でAB面を換える。コントの真っ最中だから、曲が分断されるのに比べれば、ずっとスマートに両面がつながっている)。コントはBGMこそあるものの寸劇の形をとっていて、それが終了すると本来のマジメな曲のテーマに戻っていく。まったく前後の流れと無関係な寸劇が入っているという構成は、かなりユニークだと感じた。それまでもYESの「海洋地形学の物語」というLP2枚組各面1曲の4曲揃いの組曲なんていうものも聴いていたが、それでも変化をつける曲にあたるところに寸劇というのは面白かった。

 そもそもPassion Playというのは、キリストの受難劇のことをさしている。これは布教のために催されるもので、娯楽の少ない時代にはかなり楽しみにされていたらしい。ところが、受難劇なんていうものは、もともとそれほどおもしろいものではない。それでも、布教のためには多くの人に興味を持って見てもらわなければならないのだ。そこで、人を飽きさせないために、センターにコメディをはさみ、受難劇を前後編にした構成が生み出された。コメディで人を喜ばせ、その前後の受難劇も真剣に見てもらおうというわけだ。こうしたアイディアによって、今にいたるまで受難劇がドイツなどに残ったという。

 アイディアを駆使してアピールするのは、編集者にとって重要なスキル。そんな精神を持ちつづけていくべし、という意味を込めたのが、この社名だ。
 なお、一語のPassionplayになっているのは、やはりJethro Tull「WarChild」で、2語の言葉を1語にする言葉遊びを見たことが影響している。単純に受難劇と差別化するのが主目的だ。

 ただ、池ヶ谷の野望として、YES(Ykegaya'sEditorialSystem)という社名案もあった。だが、あまりにそのままになるので、控えてしまったのだ。個人サイトをIESとするあたりが未練がましいといえる。

 そして、この項目がやや読みづらい仕様なのが、本人の照れくささによるのは明白である。